続・江口玲ピアノリサイタルwithCD75 [ピアノ]
衝撃の6/19のコンサート(⇒前の記事)、あれからもう1週間以上経ちました。
今でも脳裏にはっきりと焼き付いています(^-^)
まず当日のピアノ。CD75。
CDから始まる番号のピアノはNY製スタインウェイの中でも、
特に出来の良いD型(フルコン)個体で、
販売用ではなく、NYスタインウェイが、
アーティストへの貸し出し用として管理していたもの。
演奏家のコンサート専用ピアノとして生を受けたエリートです。
CD75はその中からホロヴィッツ選んだわずか数台のCDの中の1台で、
特に気に入っていたというピアノです。
1983年の初来日にホロヴィッツがNYから持ち込んだという事でも有名です。
しかし1983年のコンサート自体は、有名な音楽評論家の言葉にもあったように、
確かにヒビの入った骨董品。
私は、その話題性から、そのNHKの放送を見ましたが、
当時は、ホロヴィッツ誰それどころか、ピアノ自体それほど好きではなく、
演奏の良し悪しまでは分かりませんでした。
#このピアノが、29年前のNHKホールのCD75
ただ、ショパンの英雄の、腹に響く低音が、
ピアノであんなすごい音が出せるのかとそれだけはずっと印象に残ってました。
現オーナーである高木さんは、当時すでに調律師をやっていたそうですが、
このCD75の音を生で聴き、勉強しなおさなければならないとショックを受け、
NYスタインウェイに修行に行ったとの事。
3年後の1986年、ホロヴィッツはCD314-503(⇒これとか)というピアノ持参で再来日し、
1983年の名誉挽回する一方、
CD75は1983年のコンサートを最後にステージには登らなくなります。
1989には、一番理解してくれたであろうホロヴィッツも世を去ってしまいました。
その後CD75は、幸運にもNYスタインウェイの元社員が、オーバーホールすることなく、
ほとんど当時のままの状態を保って大切に管理していたとの事。
一方、これも何かの偶然でしょうか、1986年の再来日の時に、
ホロヴィッツが泊まった東京のホテルの食堂に、ローズウッド製の古びたスタインウェイがありました。
それを、ホロヴィッツ専属の、伝説の調律師フランツ・モア氏が見つけ、
ホロヴィッツに弾かせたところ、ホロヴィッツが、
「こんないいピアノがあるなら自分のピアノを持って来なくてよかった」
と絶賛したといわれています。
さらに、このピアノは、1887年製で、カーネギーホールのオープン時に
カーネギーホールに貸し出されていてその舞台にいたピアノで、
ホロヴィッツがNYカーネギーホールデビュー時に弾いたピアノでもあることが判明します。
この、ローズウッドのスタインウェイ、ホロヴィッツに
「あなたは、こんなところでくすぶっている場合じゃないですよ。」
と言われたのかどうか知りませんが、まわりまわって、
高木さんの元にたどり着き、NYスタインウェイで、オーバーホールとなり、
フランツ・モア氏と高木さんで調律し、カーネギーホールにいわば里帰りで
ステージ復活となります。
そのときに、演奏したのが、江口さん。
現代のピアノとは全く違う音色と反応。
そのときすでにピアニストとして活躍していた江口さんをして、
「ローズウッドさんからたくさんピアノの弾き方を教えてもらいました」と。
その楽器を理解し、どうやったら楽器に信頼してもらえるか、
相当努力されたんでしょう。CDからも感じる演奏の進化!
私が江口さんのコンサートに初めて行こう、と思ったのも(⇒これ)、
そのローズウッドさんとのCDを聴いたからに他なりません(^^
そうして、ついにCD75が高木さんの元に来る事に。
「コンサートピアノは、舞台で演奏してあげなければ楽器として死んでしまう、
骨董品ではなく、現役として歌って欲しい」
という信念と実力をお持ちの高木さんの元に来たのは本当に幸運な事だったと思います。
2012/6/19は週末でもない平日の火曜日。おまけに、台風直撃の日(笑)
そして、そのピアノのちょうど100歳の誕生日。
その記念日に、29年ぶりに再びステージに上がることになるとは、
あのピアノも予想しなかったのではないでしょうか。
もしくは全く逆に、条件が揃うのをじっと待っていたのでしょうか。
CD75の音で勉強し直すことになった調律師と、
その調律師が仕上げたピアノで学んだピアニストが組んで、
CD75を29年ぶりに、ピアノの誕生日に極上の演奏でステージに復帰させる、、、
いやいや、命拾いしたローズウッドさんが恩返しのお膳立てをやったのかも、、
それとも、自分だけ名誉挽回したホロヴィッツが、愛したピアノの名誉も挽回をさせたかったのか、
当日の、ステージの上での、江口さんとCD75の息の合い方は、
演奏者と楽器の関係ではなく、二人の息の合った共演者と言う感じ。
江口さんのイメージにバッチリ応えるCD75。
前半はリストをしっとり歌い、後半は華やかに歌い、
アンコールは、二人で 「いっちょ、やらかしますか!」 の風情。
んー、なんていうか、これぞ男のロマンといいましょうか、
そういうの、凄く憧れます。羨ましすぎます(^^
おはようございます。
楽器も、性格が様々ですよね~。
by ゴーパ1号 (2012-06-30 07:23)
楽器の事はあまり詳しくないのですが、
クルマとか他のモノでも同じく、
ただ飾っておくよりも現役として使ってあげる方が
絶対にいいと思っております^^
by 銀狼 (2012-06-30 09:42)
生の音が聞きたくなります。
子供の頃、ピアノマン(ぴあの小僧?)でしたから。
(4年間だけですが…)
by schnitzer (2012-06-30 18:57)
おはようございます。
たまには・・・・音楽会もいいですね!!
もう何十年も行っておりません!!
by BPノスタルジックカーショー (2012-07-01 05:48)
いやー、本当にいい楽器って、いい表情をしていますね。
by 駅員3 (2012-07-01 14:53)
>うたぞーさん
nice! ありがとうございます。
><ゴ>さん
CD314-503だけは触った事がありますが、
オーバーホールしてかなり変わったらしいとはいえ、
まぁ、これがピアノという同じ楽器か?というくらい様子が違ってましたね。
これを仕事として生きる人たちの情熱、努力は本当に凄いと思いました。
>銀狼さん
本領発揮する姿は楽器でもクルマでも素晴らしいものがありますね!
>sonicさん、yogawa55はやぶささん
nice! ありがとうございます。
>schnitzerさん
おっと、あの映画でしょうか?
やはり、生の音の魅力は絶大です!
>ゲットさん
nice! ありがとうございます。
>ノスタルジックカーさん
なんだか私にとっては究極の非現実的な一時でした(^^
>bee-15さん、マチャさん、an-kazuさん
nice! ありがとうございます。
>駅員3さん
私以外の何人も、ああのピアノが嬉しそうだったと話すくらいの
素晴らしい演奏会でした!
>こさぴーさん、くらいふさん
nice! ありがとうございます。
by さといも野郎 (2012-07-04 21:53)
たしかにコンサートホールで使うグランドピアノは長くて大きいですよね。
当然音も迫力があります。
しかし感銘を与える程良い音は良いピアニストでなければ出せませんね。
by U3 (2012-07-08 14:29)
>marumaruさん、lyu244ocaさん、miyukimonoさん、ぼんぼちぼちぼちさん
nice! ありがとうございます。
>U3さん
同じピアノでも、優れた演奏家から出る音はさらに素晴らしい歌声になりますね。
本当に、ピアノと演奏家が一体になって語ってくる演奏、本当にすばらしかったです!
>Lobyさん
nice! ありがとうございます。
by さといも野郎 (2012-07-10 21:22)
>かずもんさん、CASCO事業部さん
nice! ありがとうございます。
by さといも野郎 (2012-07-14 12:32)
>YUTAじいさん
nice! ありがとうございます。
by さといも野郎 (2012-07-15 18:21)